「海賊だー!!」
甲板に大声が響きわたる。
それが切っ掛けとなった。
男がツインブレードを横に薙ぐ。
飛び退って逃れられる間合いではなく、避けるしかない。
二者の体格差によってスティルチがそのまま振り抜けば、ショロトルにとっては上段に入る。回避するなら身を屈めるのが定石。
だから、ショロトルは上に飛んだ。
下方を狙ったツインブレードが空を切る。刃を掻い潜り開け放たれていた扉から、船内に転がり込む。
足で扉を閉め、走る。
火薬の音が、腹の底に響く。撃ち合いが、始まっていた。
海賊が乗り込んでいるなど想定していない船員は、破壊工作が行われる可能性など念頭にない。
「武器庫は?!」
右往左往する船員に聞くと、場所を怒鳴り返してくる。当人は弾を込めている最中だった。
駆け寄り、横並びの大砲を固定しているロープを片っ端から切り落としていく。
「おい、何すんだお前!」
叫んだ船員が、弾を吐き出した大砲の反動で跳ね飛ばされる。空いた砲口からソラルヤーダの位置を確認する。
轟音に続いて海面に水柱が立つ。
その向こうから砲弾が飛来した。
無我夢中で横に飛ぶ。
船の外壁が弾け、腕で目をかばう。
「ハッ、最高だな」
戦端が開かれた直後の着弾。まぐれではない。予測射から命中までが、尋常でなく短いのだ。
破壊工作などなくても、ワードック一味は無敗だ。
「弾に当たりかけたのが、そんなに嬉しいもんかね」
緊張感を欠く声に、そぐわぬ殺意。
ツインブレードが、ショロトルの立っていた場所をえぐる。
目の前にいるのが敵と悟った船員たちも、各々の武器を手に取った。
状況を不利と見るや、ショロトルは踵を返した。
「あいつは僕が引き受ける。海賊船を頼む。とにかく撃って近づけないでくれ」
船員に指示を飛ぶのを、背中ごしに聞く。せっかく司令塔を潰したというのに。
だが、打ちまくろうにも弾と火薬がなければ、関係ない。
ショロトルは砲弾庫に走った。