よろずの鬼とたたりの神

3,欲鬼

 犬神が身支度を整える気配で、よろず屋は目を覚ました。しかし起きたことを気取られるのは恐ろしく、目を瞑って寝ている振りをした。獣から人に戻った体を着物に包み、部屋を出て行った後にうっすらと目を開く。
 あたたかい。
 いつの間にか布団が敷かれ、寝かされていた。上等な真綿の布団は体が深く沈み雲に寝そべっているようだ。
 昨晩はどれほど長く交わっていただろう。一度や二度では済まなかった。一晩中、喘ぎ善がりもがき続けて、あちらこちらが痛む。腕や脚そしておそらくは首にも赤く牙の跡が残っているが、血が止まらぬような深い傷はない。
 額に触れてみる。二本の角はちゃんとまだそこに生えていた。
 ゆっくりと体を起こして、着るものを探しながら部屋の中を見回す。
 誰が用意したものか、真新しい服が枕の横に重ねてあった。肩に羽織りそろりと窓の外を覗く。そろそろ犬神が宿から通りへ出た頃だろうと思ったのだ。
 背の高い御仁ゆえに、後ろ姿でもすぐにわかった。すれ違えば目が素通りできない容姿をしているが、まるで人と変わらないように見える。それでもあれは神だった。
(この国の神さんとまぐわっちまった)
 その時にぴたと犬神が足をとめ宿屋の二階を仰ぎ見たので、よろず屋は慌てて体を低くした。屈んだ拍子に腹の中に残っている精が溢れて、へたりこむ。
 商いで生じる欲なんかとは比べものにならない。こんなに腹が膨れたのは初めてのことだった。
 脚に力が入らない。商いに出かけられるだろうかと不安に振り返った箱笈の上、懐紙に乗せて光るものが並べてあった。這い寄って何があるのか確かめる。玉の代わりに張り型のいくつかがなくなっているようだ。いくつか買ってやるといっていたけれど、これがもしや代金のつもりなのだろうか。
 多すぎる。いや、張り型でさせられたことを考えれば、むしろこれは妥当なのだろうか。商いの品である張り型を片端から体に押し込められ、感想を詳細に述べさせられた夜を思い出し、よろず屋はぶると身震いをした。
 体でお品を売るような商売はじめたつもりはない。ないけれど、ものを持っていかれてしまった以上、お代をもらわなければ商売は成り立たない。幸い悪いものではないようだ。くれるというなら貰っておこう。
 玉に傷がつかぬよう、財布とは別にしまい込んだ。
「お客様」
 襖の外に人の気配がし、返事をする声が裏返った。
 羽織った着物の襟を引き寄せ、裸の体を隠す。いやそれよりも鬼であることを隠さねば。角は、面紗はどこにいったと手が宙を彷徨う。
「旦那様よりお世話をするよう、申しつかっております。朝食の用意はできておりますが先に湯を使われますか?」
「ふ、風呂ですかい?」
 角は隠せても、目の色までは変えられない。面紗を外せば、瞳の色が見えてしまう。多く共用である風呂場は、よろず屋にとって縁遠い。なんと言って断ろう。体を清めたいけれど風呂は避けたいなんて、不自然にもほどがある。
「今は他のお客もおりませぬ。ゆるりと過ごせと、旦那様より言伝です」
 犬神が優しいのか恐ろしいのか判断しかねて、よろず屋は首を傾げた。あんなに恐ろしかったのに、この細やかな気遣いはなんだろう。鬼であることが露見していないのだから、布団を敷いて寝かせたのも新しい着物も犬神が手ずから用意したに違いない。朝食と風呂、張り型には多めの代金ときた。
 それでも食い殺されるかと思うような脅かし方をし、望まぬ自慰行為を強要させた上にこの身を犯し尽くしたのも、同じ人物であるのだ。
 鬼であることがバレないのであれば、高級な宿の貸切風呂には興味がある。一晩過ごしてしまった以上、どうせ金は取られるのだしよろず屋ただ一人のために用意してくれたというのなら楽しまない手はない。
 角を隠し面紗をつけて着替えを持つと、気だるい体を引きずって階下に降りた。脱衣所と風呂の隅々まで確認し、間違っても中に誰もいないことと覗き見られる心配がないことを確かめた。
 いざという時に顔を隠せるよう、手ぬぐいを一枚余分に持ち込む。体を流し、腹の中を洗い湯船に体を沈める。葦原に風呂などない。川で水を浴びるか、濡らした手ぬぐいで汚れを落とすのが精々だ。風呂とはこんなに気持ちがいいのか。心地よさにうっとりと息が漏れた。誰にも気兼ねなく足を伸ばすことさえできる。
 用意してあった真新しい着物は、よろず屋でも着ることのできる大きさだ。尻端折りにしてしまうので身丈は気にならないが、大抵の着物は身幅と裄丈が足りないのだ。
 こんな大きな着物もすぐに用意できてしまうのだから恐ろしい。いやむしろこの大きさは犬神の着物なのではないか。
 思わず着物に鼻を寄せた。虫除けが臭うだけで、他の人間が男の人間が袖を通した感じはしなかった。
 部屋に戻ると朝食の膳が運ばれてきた。キノコの味噌汁と、混じりけのない白い米が湯気を立てている。胡麻がふうわりと香る白和えと山菜のおひたしの小鉢が並び、白出汁で味をつけ鶏そぼろと卵でとじた豆腐の上に、刻みあさつきが散らしてある。
 椀は薄くて軽く、持つ手が震えた。
 曲げわっぱのおひつには、おかわりのご飯が用意されている。
 腹が膨れれば、食後には頼まずとも茶が出てくる。ぬるめに入れた緑茶を啜り往来に行き交う人をぼんやりとながめていると、商いを放り出してこのまま寝てしまいたくなる。しかし、働かなければ食うに困る。
 重たい体に重たい荷物を背負い、宿を出る。成り行きとはいえいくらかかるか確かめもせずに一夜を過ごした上に、手厚いもてなしまでうけてしまった。
「ここは一晩、いくらなんでしょ」
 どれほど財布が軽くなるのか、恐ろしい。いざとなったら犬神が置いて行った玉を代わりに置いていこう。それくらいの価値はありそうな品物だったから。
「既にいただいております」
 番頭は財布を出そうとしたよろず屋を止めた。
「はい?」
「むこう七日分ほど、旦那様からいただいております」
 昨日、そんな言葉が交わされるのを小耳に挟んだ。端からその予定で宿をとってあったわけだし、そのまま払い戻さなかったのだろう。国を治める神、流石の財力だ。
「そいつは、ええと。あたしが泊まるためじゃあないですよね?」
 恐る恐る確認をする。空いた日数は、他の女を連れ込んだりするに決まっている。けしてよろず屋を囲うためではない。
「手前どもはお客様のお世話を申しつかっておりますよ。今日もお戻りをお待ちしております」
 にっこりと微笑む番頭から逃げるように、よろず屋はいそいそと宿を出る。ここのもてなしは余りに魅力的すぎる。早く逃げ出さなければその誘惑に屈してしまいそうだ。自分で稼いで、身の丈にあった宿に泊まるんだ。
 決意を固くしてから街に出た。
 戌の国は玉を産するゆえ、市場に出回る玉は概ね質が高いが値付けも辛い。玉はできることならば、他の国で金に換えたい。
 臨時収入の玉には手をつけず、普段通りの商いをしていつものままの稼ぎを得た。
 しかし昨夜一晩、宿代が浮いたおかげで懐に残る金は僅かばかり多い。余剰の稼ぎをどうしたものか。僅かな贅沢ならば楽しめる額だ。悩みながらふらりと歩き、足が向いたのは甘味屋だ。このくらいならば、気が咎めない。
「なんだ、甘党なのか」
 頭の上から、腹に響く声が落とされた。
 一際に大きな男がよろず屋の顔を覗きこむ。琥珀色の瞳と視線がぶつかり、目をそらす。犬神は、まるで友に話しかけるような気さくさで声をかけてきた。
「なんだバケモノを見たような顔をして」
 震え上がるよろず屋をみて笑う。バケモノの方が余程良い。その本性をこの目で見ていなければ、この人こそが犬神だなんて言われても信じられなかったに違いない。
 団子を焼いていた店主が、けらけらと笑う。
「安心しなされよろず屋さん、怖い人じゃねぇ」
「そうそう確かにおっかないくらいでっかいが、のっぽさんは優しいお方だよ」
「羽振りはいいし、いい男だしねぇ」
 街の人間は口々に褒め称えるが、同意できない。
「はぁ」
 困り果てて、とりあえず相槌を打つ。話題の中心にいるのが自分たちが祀っている神だと勘付く者はいないらしい。
 神殿に献上される品質の、上等な玉と衣服。人並みはずれた体躯や金の瞳。見抜く要素はいくらでも散らばっているが、誰も目の前に神がいるなんて思いながら暮らしてやしないから気づかない。まして街人に混じって酒を買い、団子屋に立ち寄っているはずがないのだ。
「こんなところで会うなんて、いや全く偶然ですね」
 神様が毎日のように油を売っているようじゃ、国の行く末が危ぶまれる。
 とりあえず、仕事で使う笑みを口元に浮かべた。どうせ目元は見えないのだから愛想笑いで構いやしない。
「偶然であるはずがないであろう。昨晩お前の“ここ”に」
 言いながら体をぐいとよせ、下腹を撫でる。周囲に聞こえぬように、声を低くし囁く。
「玉を仕込んでおいたゆえにな、すぐに居所を辿れるのだ」
 腹の中の玉の欠片は犬神が力を込めたもので、まだ彼とつながっている。意識した途端に、ぞわりと恐怖に刺し貫かれ、慌てて腕の中から逃れる。また結界で縛られた時のように体が動かなくなってしまう気がした。
「一体、あたしに何の用で?」
「なに、昨晩手酷くしてしまったゆえ、商いに障りがあっては哀れと思うて様子を見に来たのだ。存外、具合がいいようだ」
 にこにこと笑う様は気がよく身なりのいい男でしかない。しかし上から下まで眺め回す目つきは鋭く、居心地が悪い。
「そりゃお気遣いいただいたようで、恐縮です」
 ではあたしはこれにてと、そそくさ逃げだす。恐ろしいものは見ないに越したことはない。逃げ出す背中に負った笈を犬神はがっしと掴んで止める。
「そう連れない態度を取ってくれるな。一晩、肌を寄せ合った仲であろう」
「あのあの、旦那あんまりそういうことを大きい声でいわれちゃ」
 店主も周囲の者も気にする風すらない。それがいよいよ不気味であった。どうやら犬神の伊達男ぶりは街の人間に知れ渡っている。それを女にも男にも受け入れられているとでもいうのだろうか。
「上等な酒を用意したのだ。一献付き合わぬか?」
「お酒?」
 よろず屋はそれに目がないのだ。飛びつきかけたが、自制する。
「イエイエ、そんなお気遣いなく。商いの間は酒を控えておりますので」
 適当な言い訳を並べながら、下がる。目先の欲に負けて飛びついたら、失うものが多すぎる。
「神に奉ぜられるものゆえ、この国で最も美味い。本当にいらんのか」
 犬神は残念そうな顔をして、よろず屋の鼻先で腰にぶら下げた徳利の栓を取る。かぐわしい香気が、ふわりと鼻先をかすめ頭の奥をぼうとさせた。
「おぬしのために用意された宿に、俺と共に帰るだけでこの酒が飲める。そうさな、甘い菓子が好きならそれも用意させよう。どうだ?」
 酒気がよろず屋を手招きする。こんな良い香りをするものを、目の前にぶら下げられたらたまらない。上等な酒。酒だけということはない、立派なつまみもあるだろう。
 誘惑に甘えていれば、またあのお宿に泊まれる。それは自分の稼ぎで泊まるよりよほど上等で心地よいのだ。ごくり、と喉がなった。
 ダメだダメだと頭を振って邪な考えを吹き飛ばす。
 それじゃあダメだ。そんな手抜きをしていたんじゃ欲が食べられないじゃないか。ご飯を腹一杯食べていても、それだけではいつか飢えてしまう。欲を食わねば欲鬼の本性が満たされない。
 だが実のところ、鬼としてもよろず屋の腹はこれ以上ないほど膨らんでいる。昨晩に注ぎがれた欲がまだ残っているのだ。神の欲は今までに食べた何よりも甘く熱く美味い。
 面紗の下からそろりと男の顔を盗み見る。あんなに恐ろしく怒って見えたのは、気のせいだったんだろうか。酒に誘う微笑みからは、異形の顔は想像できない。
 目の前にぶら下げられた餌と犬神を見比べ、ぐぬぬとよろず屋は唸った。
「本当にいただいてよろしいんで?」
 念を押すと、犬神は明朗に笑いよろず屋の肩を引き寄せた。
「応とも。一度した約束を違える俺ではない」
 いかに盛った犬とて、二夜続けてあれほど激しくなさる程に旺盛ではないだろう。不承不承、首を縦にふる。
 おかえりなさいませという声に迎え入れられ、結局、昨晩と同じ宿の同じ部屋に連れ込まれた。
 待ち構えていたように部屋に酒器が運び込まれ、膳に乗せられたいくつかの肴が並ぶ。しかも出てきた酒は、持ち込んだものよりも多く見える。まるで前もって、いつどき二人が戻って来るかわかって用意したみたいだ。
 上等な宿のもてなしとは、みんなこのように行き届いたものなのか。犬神が格別に上等な客だから受けられるもてなしか。あるいは、全てが謀の内なのではないかというぞわりとした想像も脳裏を掠めた。
 用意されたのは玻璃の内側に漆を引いた酒器だった。見目鮮やかで、ひやりとした手触りと裏腹に口当たりはまろい。冷やした酒を注ぐと、甘味にキリとした酸味をほのかに混ぜた林檎を思わせる香りが立ちのぼる。
 喉を通る時、鼻先に抜け後には旨味がじっくりと舌に染みてきた。
 恐縮し体を強張らせていたのも、盃を空にする度にほぐれていった。
 頭の芯を鈍らせるというより、気持ちを軽くし浮つかせていくような心地のいい酔いが全身に回っていく。
 何もかもが用意された座敷で、よろず屋が買ってきたものといえばみたらし団子くらいだ。甘辛いタレとまだほのかに暖かい団子を口に放り込む。焼き目をつけた団子の香ばしく、米の甘みが酒の旨味によく馴染む。
 頬を膨らませてもぐもぐとしていたところに、犬神がずいと体を寄せてきた。
 面紗をぴらりとめくりあげみたらしのタレをつけた口元を、舌先がなぞる。よろず屋は文字通り飛び上がった。やっぱりタダで帰すつもりなんてなかったんだと、逃げ出すが、立った途端にくらりと酔いが回った。
 同じように呑んでいるのに少しも酔った様子のない犬神が、足から力の抜けたよろず屋を抱き寄せ、腕の中に抱きとめた。
「あたしはこの辺りでお暇を。このように酔ってしまいましたので」
 ぺたりと膝の上に座り込み、どうに回った腕を引き剥がそうともがく。
「おいおい、どうしたよろず屋。そんなに逃げると、本能が疼くじゃないか。随分と気の利いた誘い方をする。逃げる獲物は食いたくなるのが、犬の道理だ」
「一体何のことでございましょ」
「昨晩は、お前が気をやって途中で終わった。興が乗ったゆえ、続きをする気になった」
 血の気とともに酔いが一気に引いた。あれほどに激しくしておいて、まだ収まらないというのか。神の怒りは底がないのか。早くも座らされた尻の部分に、熱いものが当たっている。
「次はどんな石を飲ませてやろうか?」
 腹を撫でる手が、小さな石に込められた術を呼び起こす。腹の一番深い場所が指でなぞられる感覚に、仰け反った。犬神の気が熱いばかりではなく、まとわりつくような情事の記憶に体が反応する。褌の締め付けを苦しく感じるくらいに膨らんだ股座を、着物の裾を引っ張って隠す。
「犬の旦那、勘弁してください。そんなにされちゃ、体がもたない」
 許しを請う声が震えた。
 畳に押し倒される。のしかかる男が放つ、肌を騒つかせる気配。結界を通り抜ける時に感じるものと相違ない神の力。
「昨日の今日ゆえ、まだ柔らかいな」
 褌をずらして、入口を指でいじり笑う。着物の帯を解き襦袢をはだけ、犬神の体が露わになる。よろず屋は性急に押し込まれることを恐れて竦む。
 しかし指先は浅く出入りし、戯れるばかりだ。そそり立つ魔羅はそのままにして、ちいとも襲ってくる様子がない。快楽に溺れる喜びを知った後では、その手つきはもどかしく、切なさを覚えてぞくぞくと震えが込みあがってくる。
 もっと深い繋がりを求めて、誘い込むように腰が揺れる。その先をしてほしい。よろず屋はついに相手の腰に足を絡めて引き寄せた。
「旦那ぁ、お願いします。このまんまじゃ生殺しだ」
 根負けして、続きを強請ったよろず屋をみて犬神が喉奥で笑った。
「良いのだな?」
 太ももを抱え、両の足が押し広げられる。
 面紗を奪われ、顔を隠すことも許されず犬神の熱く太いものを押し込まれる時の顔を晒した。内臓を押し広げる圧迫感と硬さが苦しく、両手両足で犬神の体に縋りつく。手のひらの下で肌がざわりと動く。
 快楽で本能をむき出した犬神が、人から獣の姿に変化をした。腹の中で魔羅が形と大きさを変えて暴れる。未知の感覚に、喉から嬌声が漏れた。突き上げてきた絶頂の快楽に、正体を隠し通す余裕などなく角が額から二本顔をだす。
 褌を膨らませていた先端が、どろりと濡れて染みを作る。
「このくらいで感じていてよいのか? 俺はまだ動いてもおらんぞ」
 精を吐き出してしまったよろず屋の下半身を、布ごしに撫で上げつまむ。べたつき肌に纏わりつく感触に顔をしかめ身をよじる。だが汚した褌の始末もできないでいるうちに、犬神は激しくよろず屋を犯し始めた。
 意識を他に向けて油断していたところを嬲られて、あまりにも無防備な反応を晒した。一度我慢できずに表に出してしまったものを、引っ込めるような余裕はない。腰使いで感じている表情を見つめられながら、一番敏感な角を指先で弄ばれる。揺さぶられるままに声をあげ、身を捩る。
 ただただ恐ろしかった昨晩よりも、激しく乱れているという自覚はあった。酒が自制心を溶かしてしまったんだ。
 体の下から打ち付ける振動は、徐々に間隔を早くしていく。汗をかいた肌に犬神の吐く息がひやりと冷たい。やがてよろず屋の体を抱き込み、前足と牙でしっかりと押さえ込んだ。そろそろくるという予感はあっても、逃れようがない。
 一際激しく腰を打ちつけ痙攣した後、奥に熱いものが溢れた。次から次へと注がれて止まらない。射精が始まると同時に、根元で膨らんだ瘤がしっかり塞いで一滴も外へ溢れていかない。
「今日はお前が気をやっても、やめるつもりはない」
 覚悟をしておけよ、と乱れた息を整えながら言う。嗜虐的な色を顔に浮かべて、よろず屋を見下ろす。腹の奥が、疼くような声色をしていた。
 既に一度は互いに達していると言うのに、まだ終わらせるつもりはないのだ。
 嬲られ翻弄されて、既に脳髄が焼き切れそうだった。

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