20,ト・パレルトン

飛ぶ 手紙 忘れ物

 蒼穹に白い羽が舞う。
 結局アナログな手段が、後に残らず盗み見も複製される心配のない唯一の媒体だった。
 通信網に張り巡らされた監視を裏切る伝書鳩。これで絶対に見つけられまい。
 決して見られてなるものか。
 どんな手段を使っても、届けてやる。
 優しく包み込んだ両手から解き放った鳩が、空に飛ぶ。
 私の元に本国からの客があったのは、その一週間と三日後だった。
 物資の補給ではない。知らない人間だ。
 それなりの身分らしいことが、その服装と立ち振る舞いから伺えた。私は個室で男と二人で話すことになった。
 仕事の内容や出身地のようなプライベートな内容について、幾つかの質問がされた。
 気持ちが悪いと思いながらも淀みなくそれに答え、話は十分ほどで終わって私は部屋を追い出された。
「ああ、そうだ君、忘れ物だ」
 手には小さく畳まれた手紙がある。
 それは恋文。私が故郷に向けて放った、誰にも見られたくなかった手紙だ。
「職務中に随分と、プライベーナやり取りをしていたようじゃないか」
「それは、その」
 顔が真っ赤になった。
 思ったように言葉が出てこない。
 眉間に力を入れていた男は、こらえきれなくなったようにふっと笑った。
「色恋にうつつを抜かしている奴はとっとと故郷に戻れ」

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